SPECIAL
インタビュー
「第1回 エクストリームアイロニングオンラインミーティング」~対談編~
今回のイベントもいよいよ終盤に!
書籍をもとにエクストリームアイロニングの歴史に触れ、最後の質問コーナーでは杉本さん、松澤さんから名言が飛び出しました。
エクストリームアイロニングの楽しみはまだまだ終わらない
(杉本さん)
今回のテーマのひとつでもある、ギアの紹介もしたいと思います。アイロンも複数用意しているのでご紹介させていただく。
私が気に入っているアイロンのひとつにPanasonicの自動アイロンがあります。だいたい家事かけ用のアイロンの色は白や主婦にやさしい色を採用していることが多いが、この自動アイロンは男っぽい黒のデザインで、スチームはなく単純に温度を設定するのみで、アイロンがけのかけ心地も良い。松澤さんの著書をみても、このアイロンを使っていたので最初に買ったアイロンでもあります。
エクストリームアイロニングでアイロンを選ぶポイントとして、軽さも大切です。アイロンをかける場所や状況に応じて、どんなアイロンを選ぶかは考えていただければと思います。松澤さんはどのアイロンを使われていますか?
(松澤さん)
私はPanasonicのアイロンですね。大きいサイズのアイロンが好きですね。
(杉本さん)
海外のアイロンメーカーだと、大きいサイズのアイロンはけっこうありますよね。続いて「アイロン台」について話したいと思います。
アイロニストは通常立ってアイロンをかけるので、立ってアイロンをかけられるアイロン台を使います。今日こちらに用意しているアイロンは無印良品製で、このアイロン台は脚がたためるだけでなくアイロン台の面積とおなじ幅でたたむことができるんです。重さとしては、約3㎏あり少し重たいのだが鞄のなかにいれることもできるサイズとなっているのでおすすめです。
水中でもアイロンをかけたことがあるのですが、ダイビング用のメッシュバッグに背負えるものがあり、今回会場にもってきているバッグは無印良品のアイロン台がちょうど収まるサイズになっているんです。本来の目的とは違って、アイロンのためにつくられたかのようにピッタリなんです。
(松澤さん)
これ!ほんと良いですよ!
ミニマリストなアイロニスト
(杉本さん)
最近「ミニマリスト」でアイロンをかけるかたもいる。アイロン台に元々ついていたアイロンカバーには金属素材が使用されていて、保温効果もあります。
(松澤さん)
アイロン台をどうするかというと、例えばバックパックのなかには1枚プレートがはいっていることが多い。そのプレートを引き出して、プレートにアイロンカバーを被せて、アイロンをかけることもできる。
エクストリームアイロニングの考え方として、日常の家事をそのままエクストリームな環境に持っていく、という考え方もある。ただエクストリームアイロニングを突き詰めていくと、荷物は少ないほうがいいですし、軽いほうがいいんですよ。ひとつのもので複数の使い方ができないか?という考え方にいたります。
例えば、アイロン台をもって山に登ったとして、アイロン台をテーブル代わりにつかうことも多いです。落石時の盾にもなり、簡易ベットになり、担架にすることもできる。エクストリームアイロニングでも、このミニマリストな考え方をとりいれています。
(杉本さん)
山を登る場合1gでも荷物を軽くしたいのですが、じゃあどれを軽くするのかという優先順位をつけるのも、自分との闘いなんです。自分との戦いに勝ってアイロンをかける!というのもひとつ達成感を味わえるのかなと思います。
オリンピック競技種目になるのも夢じゃない?
(杉本さん)
エクストリームアイロニングに関する書籍をご紹介をしたいと思います。日本で手に入る本は、松澤さんの書籍「そこにシワがあるから」を含め3冊になります。
今回エクストリームアイロニング創始者のフィル・ショウの書籍「エクストリーム・アイロニング(Extreme Ironing)」を紹介します。フォトブックのように、世界各地でアイロンをかけた写真が載っており、エクストリームアイロニングの世界大会を実施したという記録も記載されています。世界大会のなかにも種目があるんですよね。
(松澤さん)
笑ってしまうが、世界大会は5種目実施されました。「街のなか」「森のなか」「ウォータスタイル(川)」「フリースタイル」「タイムアタック」になる。
フリースタイルはなにもない広場に自由に必要なものを持ち込んで、いかにアクロバティックにアイロンをかけられるかというもの。タイムアタックはスタート地点とゴール地点を決めて、ゴールするまでのタイムを競うもの。この5種目を国別、個人で総合点を競ったとされています。
(杉本さん)
一応、シワがちゃんと伸びたかどうかアイロンメーカーが審査したとされています。また「おもしろアクティビティ」という書籍でもエクストリームアイロニングが紹介されており、松澤さんも水中アイロニングが載っています。
(松澤さん)
江の島水族館に「相模湾大水槽」という水深7mの水槽があり、嬉しかったことに水族館の館員以外で相模湾大水槽に潜ったのは私とタレントのさかなクンだけなんですよ。
(杉本さん)
相模湾大水槽でアイロンをかけるにあたって、江の島水族館に理解いただけるのは難しかったのではないか?
(松澤さん)
大変でした。了承いただき当日アイロンをかけるにいたるまで、何枚もの誓約書を江の島水族館に提出しました。魚に手を出さないことであったり、アイロンやアイロン台を何度も消毒をおこないました。このとき水中でアイロンをかけることによって気づいたこととして、熱源が確保できずアイロンがけが成立しないのはもちろんだが、一番難しかったことは水中でアイロンをかけたシャツをたたむことなんです。なので、水中でシャツをたためたことにとても達成感を感じました。
あとおもしろかったのが、ミノカサゴが私を威嚇してきたんですね。誓約書を書いたので魚に触れることはできないので、ミノカサゴに追いかけまわされました。アイロンをかけたことよりも、思い出に残っています。江ノ島水族館には感謝しています。
ギネス記録への挑戦
(杉本さん)
私は「水中アイロン長時間トライアル」のギネス記録をもっています。申請するにあたって、ギネスワールドレコーズから出された条件が、まず最低でも24時間水中でアイロンをかけなければならないことでした。そして、2人でチャレンジしてもよくて、かつ1時間の間に5~10分の休憩が認められるという条件で達成しました。
水中でアイロンをかけるにあたって、海と限定水域で環境はまったく異なります。水中なのでシャツが漂ってしまうのでしっかり固定する必要があります。そして、自分で撮影する必要があります。ダイビング経験とカメラ撮影の経験があれば、みなさんも挑戦できると思います。
質疑応答
■水中でアイロンをかけようと思ったきっかけは?
(松澤さん)
私がアイロンを始めた当時、水中でアイロンをかけないと世界のアイロニストの仲間入りができない!という風潮があった。フィル・ショウに相談していたときに「水中でかけたことがないのか?」とみられており、登竜門ではないがしょうがなくやった、というのがきっかけです。
(杉本さん)
水中でアイロンをかけるのは、ビジュアル的にも良いんですよ。金沢21世紀美術館にあるスイミングプールでアイロンをかけたことがあります。水面は薄くつくられているため、水面下からは水中にいる感覚を楽しむことができ、水上からはあたかも水中に人がいるようにみえるんです。
(松澤さん)
エクストリームアイロニングをやるにあたって、各地にアイロンを持っていくが、アイロンがけはスパイスでしかないんですよ。登山やダイビングがメインであって、メインでエクストリームを堪能でき満足するのであれば、アイロンはいらないと思います。なので、アイロンがけのために、どこかに行こうという感覚はありません。私が言うのもアレですが。
■アイロンかけるにあたって、おすすめのシャツはありますか?(杉本さん)
(松澤さん)
シャツはこれっ!といいたいところですが、私はハンカチがおすすめです。ハンカチをしっかりアイロンがけできることが基本であり、奥深いものだと思っています。ハンカチをアイロンがけしたあとに、四隅がしっかり揃ったことはありますか?これがとても難しいんです。ある意味すべての要素がつまっているのが、ハンカチですね。
(杉本さん)
私は麻のシャツをよくアイロンがけします。麻はとてもシワができやすいので、伸ばす楽しみがあります。
■アイロンがけをして、後悔しているシチュエーションはありますか?
(松澤さん)
アイロンを始めた当時、フィル・ショウの本だけがエクストリームアイロニングについて知る情報源でした。街中でゲリラ的にアイロンをかけることもエクストリームだと思っていた時期があり、銀座三越でアイロンをかけたことがあります。また、渋谷のスクランブル交差点、原宿の竹下通りでもかけたことがあるのですが、後悔しています。
(杉本さん)
はじめたてのときは、笑いをとろうとしてみんなやってしまいますよね。
(松澤さん)
最初は目立とうとしていたが、いまは「伝えない」ことを意識している。むしろ「伝えない」姿勢で伝わったらいいと考えている。アイロンをかけるにあたって、モチベーションに波があるのだが、MAKIさんはとても多くの場所でかけていますよね。
(杉本さん)
自分のなかで定義づけをしていれば良いと思う。ここでアイロンをかけることによって、どんな影響を与えるのかというのも事前に考えて、アイロンをかけていただければと思う。私も各所でやってきたが、「なぜここでアイロンをかけるのか」と理由を決めてやっています。あとバカバカしさもすごい大切だと思っているので、みんなに喜んでもらって、みんなの「心のシワ」を伸ばすことができればと思っています。
(松澤さん)
いまこの瞬間も「辞めようかな」と思います。
(杉本さん)
私も同様に思っていた時期がありました。でも、アイロニスト仲間がいたり、スパイスを楽しみたくなるからやっています。エクストリームアイロニングの活動についての情報は多くはないので、いま私はエクストリームアイロニングクラブをやっていますが、松澤さんのエクストリームアイロニングジャパンとひとつになってもいいと考えている。
(松澤さん)
私は代表を務めているが、あまりみんなに声をかけて一緒にアイロンをかける!というのが得意ではないが、MAKIさんの言われているようにアイロニスト仲間を大切にするという意味でも、定期的に活動する必要があると感じている。
■ベストオブアイロニングはあるのか?また、体作りも意識されているのか?
(松澤さん)
私の場合は、毎回のアイロンがけがベストですね。家でやるアイロンがけもベストです。冗談だと思われるかもしれませんが、アイロンがけを終えた後にプロテインを飲んでいます。
(杉本さん)
私は、沖伊良部島にある銀水洞でアイロンをかけたことがワンオブザベストです。ここはまだ100人ほどしか入ったことのない海底洞窟なんです。このときは感極まりました。
■最後に、今後どんなアイロニングの挑戦したいか?
(松澤さん)
私は「男のアイロンがけ」という言葉と行為をもっと定着させたいと考えています。「男の料理」ときくとかっこいいイメージがあると思いますが、男のアイロンがけはまだ良いイメージがない。職人がうどんをうつように、アイロンをかけているクリーニング屋の親父がかっこいいと思われるようになれば、アイロンメーカーが男性向けをつくるかもしれない。私個人の目標はあまりないが、少しでも世界のアイロニストに日本がちかづければと考えている。
(杉本さん)
なぜ「人はシワを伸ばすのか」という話になるのですが、シワを気にするのは人間だけなんです。シワを伸ばす行為は人間の文化的行為だと考えている。シワを伸ばすことを大事とする人もいれば無駄と捉える人もいるなかで、人間がいろいろ理由をつけることによってシワが生まれる、シワを伸ばすという行為が生まれると思っています。壁をつくらず、やる勇気をみんなにもってもらいたい。誰にも迷惑をかけず、楽しめるこんなに素敵な趣味はないと思っている。今日参加いただいているみなさんが、恥ずかしさを取っ払って、何か新しいことをはじめるきっかけになればと思います。
以上、ありがとうございました。